2009/01/18

新型(鳥)インフルエンザについて

 

インフルエンザの薬(タミフル)について

異常行動について

1歳未満の使用について

 

     
 

「新型(鳥)インフルエンザ(H5N1)について」

 

 現在話題になっている新型インフルエンザは、もともと鳥の間で感染が認めれていたA型インフルエンザの亜型で人間への感染が東南アジア地域を中心に小規模ながら報告されています。

 高病原性鳥インフルエンザともいわれていますが、鳥に対する高病原性であって今のところ人間に対してという意味ではありません。
 ただし、現在まで確認されている人での感染例の致死率は56%(2006年の集計)であり(最も死亡率が高い年齢は10〜39歳)高い病原性を持っていると言えます。
  また致死率の年齢分布は高齢者での致死率が高い従来のインフルエンザと異なっています。

 近年は、香港型(H3N2)とソ連型(H1N1)の2種類のA型インフルエンザとB型インフルエンザの3種類のインフルエンザが流行を繰り返しています。

 このインフルエンザの流行とは別に、歴史的に数年から数十年ごとにより大きな規模の世界的なインフルエンザの大流行がみられ、これはそれまでとは違う型(新型)のA型インフルエンザの出現によるものでした。

 歴史的にみると、1918 年にスペインかぜ(H1N1)が大流行し、その後その子孫のH1N1 型ウイルスの流行が39 年間続きました。1957年にはアジアかぜ(H2N2)の大流行が起こり、その子孫ウイルスの流行が11 年間繰り返されました。その後1968 年に香港型(H3N2))が現れて香港かぜの大流行を起こし、ついで1977 年にソ連型(H1N1 =スペインかぜ)が再出現して加わり現在に至っています。

 このような歴史的な事実を踏まえ、新型インフルエンザの大流行の可能性が予想されるため世界的に警戒態勢がとられるようになりました。

 鳥インフルエンザ(H5N1)は、大流行する可能性のある新型として警戒されていますが、今後どうなるのかはまだ分かりません。

 もし鳥インフルエンザ(H5N1)が流行した場合、現行のインフルエンザワクチンはまったく無効です。

 当然、鳥インフルエンザ(H5N1)に対する免疫を持っている人はほとんどいないので、現在のインフルエンザの流行をはるかに上回る数の人が感染することになり、社会的な影響も大きなものとなると予想されます。当然、患者数が増えればインフルエンザによる合併症や死亡者数は増えることになります。
 ただし、鳥インフルエンザ(H5N1)が流行した時点で、いままで通常みられているインフルエンザより人間に対する病原性が強いままとは限りません。

 新型にしろそうでないにしろ、インフルエンザになったときの対処の基本は変わりません。

 予防に関しても、ワクチンが無効ということを除けばやはり変わらないと思います。

 ただし、新型が流行った場合にはその流行抑制・鎮圧のために社会的(行政的)対応が行われ、それに従って行動する必要があります。

 少なくとも日本では、過去の大流行の時よりも衛生状況や栄養状態などの状況は良くなっており過去の大流行時よりは生活環境は良い状況であり、過度の心配は無用と思います。

 

参考情報:国立感染症研究所「感染症情報センター」

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「インフルエンザの薬(タミフル)について」

 

1、異常行動について

 インフルエンザ治療目的でタミフルを内服した少年が異常行動により事故死した事例が平成17年11月に小児感染症学会で報告され、このことが報道されました。

 その後平成18年7月にも沖縄でタミフル内服中の転落死の報道がありました。

 その後も10歳代でのタミフル内服後の異常行動に伴う事故例が報告され、平成19年3月に10歳以上の未成年者にに対するタミフルの使用を原則差し控えることが決められました。

 異常行動とタミフルの因果関係は現在のところ科学的に証明はされていません。

 タミフルは、今までに大人を含め数千万人分が使われ、また日本ではインフルエンザにかかった子どもの9割に処方されたともいわれています。

 インフルエンザの高熱に伴う異常行動(熱性せん妄)や脳症に伴う異常行動は、タミフル使用前から経験上知られていました。(ただし、異常行動に伴う事故死があったかは不明です)

 タミフルの副作用と考えるのには、明らかに異常行動がタミフルの使用により増えるのか調べなければなりません。

 昨年発表された報告で、発生頻度が増加するようなことないようですが、内容的に影響があるかどうかの結果は得られていません。

 今までの私自身の経験では、タミフルの副反応として異常行動があるような印象をは持っていませんが、あくまで個人的な印象であって絶対安全という保証はありませんので、調査の結果を待つしかありません。

 日本でのタミフルの使用量は世界的にみて突出しており、インフルエンザは薬を使わなくても子どもを含め健康な多くの人は自然に回復するものなので、現在の日本のタミフルの使用法が適正かどうかは考える必要があると思います。ただ、そのためには患者さんとしてのみなさんがインフルエンザのことやタミフルの使用に関して正しく理解してもらわなくてはなりません。

 現状では、10歳以上の未成年者は原則タミフルの使用はしませんが、その他の年齢では、基礎疾患などがありインフルエンザ自体による健康被害のリスクが高い場合を除けば、タミフル使用の判断は本人(保護者)しだいということになります。

 また、インフルエンザに対しては治療以前のこととして、ワクチン接種などによる予防を心掛けることが大切であることを忘れないで下さい。

 

 

2、1歳未満の使用について

 タミフルに関して平成16年1月2日に米国の発売元である米ロッシュ社が、米国の医療従事者に向け「本剤を1 歳未満の乳児に使用しない」よう求めるドクターレター(Dear Healthcare Professional letter )を発信いたしました。これを受けて、日本でも発売元である中外製薬および塩野義製薬から「1 歳以上の患者のみに使用されますよう重ねてお願いいたします。」といった安全情報が出されました。

 これは、動物実験で1000mg/kgのタミフルを生後7日齢のラットに単回投与(外国人小児における臨床推奨用量の約250倍、日本人小児における臨床推奨用量の500倍)した結果、異常に高用量のタミフルに曝露されたことによると考えられる死亡がみられたことと、1歳未満の臨床試験データーが不十分であることから製薬メーカーがとった対応です。

 この件に関して日本小児科医会が厚生労働省に対して質問をした回答は以下のとうりでした。

「・・(略)、1歳未満の乳児に対する本剤の投与については、禁忌ではないものの、安全性及び有効性が確立していないこと、また、幼若ラットの試験において薬物の脳内への高濃度の移行が確認されたとのデータがあることを踏まえて、インフルエンザと診断された患児においてリスクとベネフィットを十分考慮し、かつ、
患児の保護者等に薬剤名、服用方法、効能、特に注意を要する副作用及び本剤の1歳未満の患児に対する安全性及び有効性が確立していないことなどについて丁寧に説明し、同意を得た上で、慎重に投与すべきです。」

 その後、日本小児科学会と日本小児感染症学会が調査を開始しました。

 平成16年11月の日本小児感染症学会での1歳未満児のタミフルの副作用報告では重篤な副作用は認められていません。

 日本小児科学会の副作用調査(中間報告)では、平成15年11月から平成16年4月までにインフルエンザ治療薬タミフルを投与された1歳未満の乳児が、調査した156医療機関で737人報告され、その内副作用が疑われる症状の報告は2・7%ありましたが、重症例はなかったとされています。

 これらを踏まえ、1歳未満に対するタミフルの使用は可能と考えていますが、インフルエンザは多くの場合自然治癒が期待できる感染症なので、基礎疾患などがありインフルエンザ自体による健康被害のリスクが高い場合を除けば、その使用に関しての最終判断は保護者しだいということになります。

 

 

参考情報:厚生労働省「インフルエンザQ&A 」:Q6

     国立感染症研究所感染症情報センター「インフルエンザQ&A(医療従事者)」

     国立感染症研究所感染症情報センター「インフルエンザQ&A(一般)」

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